当初,「コンピュータ・サイエンス」という言葉が一人歩きをしていて,単なるソフトウェアの使い方の研究のように思われて困るという発言があったと思います.でも,私たちの議論は,渡辺さんが関係している理論計算機科学(でいいのでしょうか?)に終始していたように思います.つまり,私たちがそういう意図ではないとしても,本当のコンピュータ・サイエンスとは理論計算機科学なんだと私たちが決め付けているように取られても仕方がないような議論をしてきたのではないでしょうか? 「コンピュータ・サイエンス」という言葉は,無定義でもそれなりの雰囲気や意味を感じさせてくれる言葉ですよね.その感じは「計算」とか「構造の稀薄さ」のような議論だけで特徴づけられないように思うのですが.計算機科学と書いてしまうと,機械の「機」の字が目に付いて,計算とかアルゴリズムとかばかりが想起されますが,「コンピュータ」というと,もっと広い世界が感じられます. あえて矮小化して言えば,今時,「コンピュータ」と聞いて,プログラムして計算する機械だという思う人なんかいないでしょう.また,パソコンを目にしたとき,これは電気仕掛けなんだから,物理学のおかげで,こういう存在があるんだ,こんなリアルはCGができるのも,きちんと計算して描画しているのだろうから,これは数学のおかげだと,思ってくれる人が多いでしょう.本当のところはわからないにしても,こういうふうに,物理学も数学も,基礎科学として認知されているわけですが,パソコンのどこに計算機科学が隠れているのでしょうか?その隠れ方を考えると,基礎科学としての位置が見えてくると思うのですが.
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